晴れの国おかやま24時間・100キロ歩行 その4
2026.06.19

こんにちは。上田建築工房の上田です。
先日、人生で初めてのぎっくり腰になりました。
妻からは「100km歩行の疲れが今になって出てきたんじゃない?」と言われました。
外耳炎から始まり、その後にぎっくり腰。そして口の中や胴回りにはヘルペスまで出る始末。
ひょっとしたら大きな病気になっていてもおかしくなかった身体が、これだけで済んだのかもしれません。
前頭部の薄毛も少し進行したような気もします(笑)。
13年前まで鍛え上げていた身体が嘘のように、今ではすっかり「わがままボディ」になっています。
さて、今回はいよいよ「おかやま100kmウォーク」最後のお話です。
百笑のエイドで休憩した後、再び歩き始め、一緒に歩いていたT氏は、つった足のメンテナンスを受けていましたが、とても辛そうでした。
それでも二人で前を向いて歩きます。
残り30km。
疲労はすでにピークを超え、ここからはひたすら自分との戦いでした。
サポーターのKさんが嬉しそうに
「上田さん、ここからですよ」
と言っていた意味も分からないまま足を前へ運ぶ。
左膝の痛みは限界に近づいており、足を出すたびに顔が歪みましたが、それを周りに見せないように歩く自分がいて、そんな新しい自分を発見しながら進みました。
そして和気橋の手前でついに足が動かなくなり、ベンチを見つけて腰を下ろすと、遅れてきたT氏も隣に座りました。
二人とも無言。
「もう無理かもしれない」
そんな思いが頭をよぎりました。
すると、T氏がカバンからロキソニンを取り出し「飲みますか?」と差し出してくれました。
二人で痛み止めを飲み「さぁ、行きましょうか」と立ち上がります。
効いているかどうかは分かりませんでしたが「少しは良くなるかもしれない」と思えるだけで、不思議と気持ちは前向きになりました。
何とか本部エイドのあるリバーサイド和気へ到着しましたが、時間がなかったので休まず前へ進みますが、ここからが本当の難関でした。
時刻は深夜2時から3時頃。
和気橋へ近づくにつれ、とてつもない向かい風が吹いていました。
真っ暗な河川敷を延々と歩き続けます。
T氏が「ここは両側にガードレールがないから、眠りながら歩く時は気を付けてね」と教えてくれました。
私は膝が痛すぎて眠気どころではなく「危ない時は私が手をつかみますから」そう伝えて歩きました。
T氏は本当に眠りながら歩いており、話には聞いていましたが、その姿に驚きました。
空を見上げると、風に流される雲がものすごい速さで動き、時折、雲の隙間から月明かりが差し込みます。
しかしそれもほんの一瞬で、どれだけ歩いても真っ暗な世界が続きます。
そんな中、本部スタッフが置いてくれたLEDの灯りが本当にありがたく感じました。
「よくこんなに並べてくれたな」と感謝しながら歩き続けます。
歩いても歩いても河川敷が続き、心が折れそうになった時にT氏が言いました。
「上田さん、あの先を曲がったらコンビニです。」
そう言われた瞬間、目標ができました。
“あぁ、経営も同じだ。目標があるから頑張れる。”
暗闇の中に小さな光が見えたような気がしました。
ついにその角へ到着。
「やった!」とゴールしたかのような喜びで右を見ると……
はるか彼方に信号機の灯り。
そして、T氏が「あの信号の先にコンビニがあります。」と一言。
「マジですか……。」
思わず笑ってしまいました。
さらに約2km進み、ようやく見えてきたコンビニ。
赤磐の赤磐松木店
きっと私はこのコンビニを一生忘れないでしょう。
やがて最後の炊き出しエイド、磐梨中学校へ到着。
岡山名物のぶっかけうどんが振る舞われていましたが時間がなく、そのまま歩き続けます。
痛み止めを二回飲みましたが、膝の痛みは全く消えませんでした。
それでも、
「足の裏の皮が全部むけても歩き切る」
そう決めていました。
しばらくするとT氏の歩みが遅くなり、彼が静かに口を開きます。
「上田さん、一緒に完歩したかったけど、このペースだと間に合わないかもしれない。僕のことは気にせず先に行ってください。」
ここまで苦しい戦いを共にしてきた仲間との別れ。
こみ上げる涙をこらえながら、
「じゃあ先に行きます。」と歩みを速めます。
T氏は最後まで私を励まし続けてくれました。
「マックスバリュが見えたら、そこから残り20kmだから。」
その言葉を胸に前へ進みます。
夜が明けると景色が見えるようになります。
しかし、それはそれで辛いものでした。
遥か先まで続く道。その先を歩く人影。
「あそこまで行くのか……」
そう思うたびに気持ちが折れそうになりますが、それでも歩き続け、やがて百笑最後のエイドが見えてきました。
『みんなに会える。』
そう思った瞬間、涙が溢れました。
ここまで頑張った自分にも感動しました。
最後のエイドでは足が曲がらず座ることも出来ませんでしたが、皆から気合いをもらい、再出発。
しかし残り10kmの所で思った以上に足が前へ出なくなりました。
計算すると1時間で2km程度しか進めていません。
「ヤバい、間に合わないかもしれない。」と焦りが込み上げます。
最後のコンビニがありましたが、そこには赤鬼が待っていました。
“赤鬼”とは、抜かれたら時間内完歩が厳しいと言われるペースメーカーです。
その姿を見た瞬間、最後の力が湧いてきました。
「自分は1時間で7km歩いたことがある。」
その経験が背中を押してくれました。
ゴール手前の橋を渡ると、百笑サポーターのY氏が待っていました。
「あと少しだ!頑張れ!」
魂のこもった言葉に涙が溢れそうになります。
心の中で何度も「ありがとうございます。」と唱えました。
“難が有るから有難い”
まさに今、自分は人生最大級の「有難い」を経験している。
そう感じました。
最後の苦痛の階段を下り、角を曲がるとゴールが見えてきました。
その手前には百笑のサポーターの皆さんが並んで待っていてくれ、たくさんの拍手に迎えられ、私は無事ゴールしました。

完歩タイムは23時間25分。
人生で一度きりの初出場。
そして初完歩。
最高の結果でした。
今まで自分のことでこれほど感動したことがありません。
自分を自分で褒めてあげたい、有森裕子さんと同じ気持ちでした。
本当に自分を讃えたいと思います。
歩いている間、気を紛らわせるために音楽を聴いていました。
最後の10kmで繰り返し聴いていたのが、Official髭男dismの『スターダスト』でした。
今でもその曲を聴くと、あの日のことを思い出します。
苦しさ。
仲間。
感謝。
そして感動。
涙が込み上げてきます。
不思議なご縁で出会った百笑の仲間たち。
そして支えてくださったすべての方々。
本当にありがとうございました。
最後は皆に支えられながら椅子に座り、記念撮影。

残念ながらT氏は、残り13km地点でリタイアされたそうですが、その想いも背負って歩き切ることができました。
みんなの期待に応えることができて本当に良かったです。
来年は「恩送り」として、百笑のサポーターとして参加したいと思います。
本当にたくさんのGIFT(奇跡)をありがとうございます。
完歩した人だけが知っている。
言葉は要らない。
もう何も。

すべてに感謝

